セラピストにむけた情報発信


 OU講座「知覚・認知とリハビリテーション:発展編 」を終えて



2008年1月22日

1月20日(日)に,セラピスト向けのオープンユニバーシティ講座として,「知覚・認知とリハビリテーション:発展編 」の講座を開催いたしました.お陰さまで35名の方々にご参加いただきました.今回は理学療法士,作業療法士の方々に加えて,看護師,医師の方の参加もあり,バラエティに富む構成となりました.

外部講師として,豊田平介氏(厚生連塩谷総合病院,理学療法士)をお招きし,研究者とセラピストの両方の立場から,知覚・認知の研究と臨床との接点について情報を提供することを目的として掲げました.

もともと本講座シリーズは,普段臨床の現場に携わるセラピストの方々にとって,基礎的な研究論文を丹念に読んでいくのは決して容易でないため,あまり時間をかけずに必要な情報を理解する場を提供したい,という意図で始めました.シリーズの第1弾として,昨年12月と今年6月に「1日で学ぶ知覚と認知の世界」というタイトルで講座を開講いたしました.その結果,当初の目的は概ね達成できたのですが,一方で「紹介された基礎理論から具体的にどのような治療・介入方法が提案できるのか?」といった実践的な提案がないことに,不満を持った方もいらっしゃることがわかりました.このような不満を解消する1つの方法として,今回はセラピストとして臨床の現場で研究と臨床の接点を見出す努力をされている豊田氏を講師に招き,持論を展開いただくことにしました.

現時点ではアンケート等の結果を見ていないため,参加者の皆様の真の評価はわかりません.ただ私個人としては,豊田さんの発表から多くの臨床的事実を学びました.

例えば研究領域では,身体部位の写真を心的に回転させるとき(メンタルローテーション),実際にその身体部位を動かすのに関わる脳領域を賦活させることが明らかとなり,その臨床応用可能性が検討されています.豊田氏もメンタルローテーションを高齢者の転倒予防事業の中で利用されております.その成果報告の中で私が最も興味を持ったことは,高齢者にとってメンタルローテーションの課題は必ずしも楽しめる課題ではなく,”非常に疲れる課題”と認識される場合がある,という報告でした.たとえ認知科学的にみてメンタルローテーションの課題に臨床応用可能性があるとしても,心的苦痛を伴うようでは,その効果は半減するかもしれません.

実際の臨床場面において高齢者にメンタルローテーションの課題を遂行してもらうには,基礎研究で用いられる課題よりもずっとシンプルに,簡単にする必要があるのではないか,など,実践的なヒントをもらったような気がしています.

今後も臨床と研究の両立を実現している若手のセラピストをお招きして,このような活動を継続していきたいと考えております.


外部講師の豊田平介氏 受講者の様子(写真は受講者の許可を得て掲載しています)


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